茶事を催したことはありますか。大寄せの茶会は行ったことがあるけど、お茶事はない。もしくは、客として呼ばれたことはあるけれど、亭主として催したことはない。準備が大変だし、道具が揃ってないし、、、という声が聞こえそうです。私はニューヨークの、いわゆるワンルームアパートに住んでいます。だから、水屋も待合も寄付もありません。まして、露路もありません。道具も揃っていません。でも毎月1回はお茶事をして、いろいろな方に茶の湯を楽しんでいただいています。茶の湯はおもてなしの心です。何も揃っていない条件下で創意工夫と働きで茶事をすることこそ、本来の茶の湯の精神に繋がるのではないでしょうか。ということで、ここでは、限られた条件下でできる茶事をご紹介します。

始めに、私の茶室を紹介します。
(写真をクリックすると、大きいイメージや、料理の作り方を紹介しています。)

昨年、たまたま3畳の畳が手に入ったので、3畳小間を考えました。写真でおわかりのように、私のアパートは北向きに窓があるだけなので、それと東側の壁を利用して北東の角に茶室を創ることにしました。その角には鉄筋のアパートに必ずある柱の出っ張りがあります。それを使って床にしました。床柱をその出っ張りと同じように作って、床らしくなりました。残りの三方を障子スクリーンで囲い、床に固定し、西南と東南の角のパネルは、出入り口のため、開閉できるようにしました。西側が茶道口、壁寄りを客の入口にして、にじってでも、立ったままでも入れるようになっています。障子に囲まれることによって、明かる過ぎず、暗ら過ぎず、落ち着いた茶室ができました。

さて、では、8月に行った茶事を例にとって、ご紹介しましょう。
ソファを腰掛け待合に見立てて、迎え付けに出ます。
客は茶室に入って、軸と風炉を拝見します。亭主が茶室に入って挨拶になります。私の風炉は電熱器なので炭手前はありません。
折敷を運びます。メニューは、ご飯、卵豆腐と煮素麺の清汁に、向付は、山河豚の刺身です。
次にお酒を運びます。酒盃がないので好みのぐいのみを選んでいただきます。
飯器がないので、汁と一緒にご飯のおかわりを差し上げます。
煮物椀になる適当な器がないので省略しました。酒を運び、客に注いでから、澗鍋を客に預けます。
煮物椀の替わりに焼魚を一人一人に差し上げます。(さわらの柚庵焼)
ここで本来なら、亭主は水屋で相伴になりますが、正客のお言葉に甘えて、茶室に持ち出して一緒にいただきます。(いつもそうします。)
話が一段落したところを見計らって、自分の折敷と客の魚の器をさげ、箸洗いを持ち出します。客が飲み終わったら下げます。(蓋がないのでさげてしまいます。)
八寸と澗鍋を持ち出して、千鳥です。(海の物は鯖のつみれ磯部巻、山の物は茗荷と水菜のおしたしです。)向付の器につけます。
千鳥が終わって、湯斗と香の物を持ち出します。湯斗は、自作のウオーターピッチャー、湯の子掬いはちりれんげです。
箸の落ちる音で、すべてをさげます。
主菓子を出します。この日はくずもち。
菓子のあと中立ちです。また、ソファに戻っていただいて、その間に茶席を整えて、濃茶の飾り付けをします。
もう一度迎えに出て、後座の席入りです。
炭手前がないので、濃茶のあと続き薄茶になります。煙草盆と座布団は省略しました。この日は正客のお計らいで薄茶を自服させていただきました。
道具の拝見が済み、道具をすべてさげて、今一度茶室に入り、最後の挨拶になります。
記録として会記をつくっています。後日、記念写真と共に会記をお客さまにさしあげています。

私は台所も水屋も亭主も、すべて一人でします。そのためには、前日にできるだけ用意万端整えて、当日、間のびした茶事にならないように心掛けています。

ご注意いただきたいのは、道具がないからと、何でも使ってしまうのは間違いです。これは使える、これは使えない、としっかり見立てる眼が必要です。また工夫して、応用する働きが大切です。そのためには、きちんと茶事の手前を勉強しなくてはならないのは、云うまでもありません。茶事の楽しさを知ったら、お茶のお稽古がもっと楽しくなるし、私のようにやみつきになってしまうかもしれません。

ご協力いただいた浅野かず代さんと今谷宏美さんにあつくお礼申しあげます。

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